シニア以降になると、収入額は徐々に低下し始める傾向にあります。このため健全な収支バランスを維持するためには生活費をそれに合わせて削減していく必要もあることでしょう。
生活費削減方法にはさまざまな側面からの対策が可能ですが、最初に注目すべきものに固定費の削減を挙げることができます。また、固定費の中で比較的高いコストとして発生しやすいものに携帯電話の通信料金を挙げることができます。
そこで今回は、シニアの生活費削減作の一つとして、夫婦で見直す携帯電話の通信料金について解説をすすめていくことにしましょう。
意外に高額な携帯電話の通信料金
2年ごとに携帯やスマホ、通信キャリアを替える流れ
現在、日本における大手電気通信事業者は、NTTドコモ、au、ソフトバンクに代表されることから、おおよそはこのいずれかのキャリアを利用されていらっしゃるかもしれません。
大手電気通信事業者では、顧客の争奪戦が繰り広げられていることから、他社からの乗り換え特典を付帯することも少なくないものです。また、2年程度の縛りが設定されており、その期間が到来しなければ、他社への乗り換えに1万円程度の違約金が発生することも少なくないはずです。
よって最近のユーザは、2年毎にキャリアを移動し、乗り換え特典を受ける形で、スマホや携帯を新しい機種へと変更することを繰り返すといったことが一般的な流れとなっています。
意外に高額な月々の通信料金
さて、あなたは現在、携帯電話の通信料金を毎月どの程度支払っていらっしゃるでしょうか。
最近では総務省からの監視の目が厳しくなってきていることもあり、大手キャリアが0円携帯やスマホを公に販売することが難しくなりつつあります。このため、新しくした携帯やスマホは、分割払いとして月々通信料金に追加される形で請求されることになります。
携帯やスマホの機種によって価格はさまざまですが、おおよそ月2500円程度が機種代として請求されることになります。
また、これに対して通信料金は、プランなどでも差異はあるものの6千円から7千円程度の請求がかかることが少なくありません。さらには、規定のパケット料を超える通信が発生した場合、パケット料金がそれに追加されることになります。
よって、大手キャリアで携帯やスマホを新規でオーダーした場合、月々のコストは、7千円から9千円程度発生していることになります。よって、夫婦の総計は毎月1万4千円から1万8千円程度にまでのぼることになります。
仮に1万6千円の通信コストが発生している場合、乗り換えまでの2年間にかかるご夫婦の通信料金の総額は、38万4千円ということになります。
大手キャリアが扱うスマホの価格
次に、大手キャリアが扱うスマホの価格について簡単に見ていくことにします。スマホについては、通信料金と同時に引き落とされてしまうことから、実質的な価格がいくら程度なのかについては、多くの方が認識されていません。しかし、実際には意外に高額であることがわかります。
というのも、仮に月々機種代金として2500円が請求されていて、2年で完済する契約の場合、およそ6万円をスマホ代として支払っていることになるからです。
2年ごとにご夫婦で12万円もの買い物をしていると考えると、少々高いようには思われませんでしょうか。
ご夫婦が大手キャリアに2年で支払うコスト計の例
通信コスト計 | 38.5万円 |
スマホ代金計 | 12 万円 |
合計 | 50.5万円 |
*上記はスマートフォン所有を例にしています。
あくまでも一般的な試算ではあり、通信プランやスマホの機種などによって差異はあるものの、ご夫婦二人がキャリアを渡り歩く2年の間に支払う総計は実に50万円に達する場合もあるわけです。
これまで現役世代で安定した給与を得てきたのなら、まだ許容できる範囲かもしれません。しかしミドルを迎えて収入が減額したり、年金での生活を余儀なくされる状況下にあるのであれば、見直しておく必要がある固定費だとは思われないでしょうか。
携帯やスマホ代のコストを圧縮するために
高額の通信コストを、大手キャリアに支払い続けている方にお話を伺うと、
「高いことはわかるが、大手なので安心だし」
「難しいことはわからないので、店頭でいわれるがまま・・・」
といったお答えをいただくことが少なくありません。
しかし、仮に、ご夫婦で2年に支払うコスト計を例えば6万円程度まで削減することができたとしたらどうでしょうか。つまりは、ちょっとした手間や学びは、44万円の価値を持つことになることになります。
定年後には、自由になる時間は個々にお持ちであるはずです。その時間を用いて44万円を稼ぎ出すことができるとお考えになれば、その価値に気づかれることでしょう。
通信コスト圧縮のための基礎知識
これまで大手キャリアのサービスを用いてこられた方が、意外にご存知のない点に、通信キャリアとスマホは、ユーザーが自由に選択して個々に用意することができるといったことを挙げることができます。
つまり、個々にスマホを購入すると共に、価格の安い通信キャリアと契約をすることができるのです。
MVNOの存在を知る
携帯電話やスマホのコストを大幅に削減するためには、MVNOの存在をご理解いただいておく必要があります。
MVNO(Mobile Virtual Network Operator)とは、仮想移動体通信事業者のことであり、大手の電気通信事業者から無線通信インフラを借り受けることで通信サービスを提供する業者を言います。
大手キャリアが持ち前で基地局を始めとするインフラを構築する必要がある一方で、MVNOはこれを借り受ければよいわけですから、より安価に通信サービスを提供することができます。
現在、日本には数多くのMVNOが存在します。これらのすべては、大手キャリアからインフラを借り受けているわけですが、よってドコモ系、au系、ソフトバンク系に分けることができます。また、MVNOのサービスエリアは、大手キャリアのそれと同じことになります。
ちなみに、最近では「格安SIM」という言葉をよく耳にされるかもしれません。格安SIMは、MVNOによって提供された通信サービスであるわけです。
SIMの存在を理解する
さて、ではSIMとは何でしょうか。SIM(Subscriber Identity Module)とは通信サービスの加入者を特定するためのID番号が記載されたICチップのことであり、ICカードによって提供されます。これをSIMカードといいます。
ユーザーが携帯やスマホを利用する場合、通信業者が提供するSIMカードが発行されますが、これを携帯やスマホにセットすることで、個々の加入者が認識され、通話や通信によって料金が発生するわけです。
格安SIMを更に安く利用する
NVMO業者は大手キャリアに比べて格安でサービスを提供しているわけですが、通話サービスとデータ通信サービスの合計額がコストとなります。このため、主に通話サービスが必要であるか、スマホのブラウジングなどデータ通信サービスを主に用いるかによって、一方のサービスのみを利用する選択肢もあります。
たとえば、ネットは使わないというのであれば、通話サービスのみでの契約であれば、業者にもよりますが月額1000円以内で通話環境を保持することができます。
一方で、電話はほとんど使わないというのであれば、データ通信サービスのみで通話サービスを契約しないことで、格安でスマホを維持することができます。ちなみに、月額650円程度でデータ通信サービスを提供するNVMOも存在します。
IP電話を用いる選択肢を知る
「とはいえ、電話番号がないのは困る」
このような方も少なくないはずです。しかしデータ通信サービスのみで通話環境を作り出すことは可能です。これにはIP電話サービスを用います。
IP電話においては、050から始まる電話番号を無料で持つことができます。また、通話料金も格安です。しかもデータ通信サービス内で活用できるので、通話サービスは不要となるわけです。
IP電話で緊急電話が使えない問題の対策
スマホと携帯の2台持ちという選択肢
電話番号は携帯電話として持っていたい。スマホは使用頻度はあまりないものの最低限の通信環境を保持したい。という方の場合、スマホと携帯の2台持ちといった選択肢もあります。
たとえば昔所有していた携帯電話に通信会社が提供する最安値基本料金のサービスを用います。通話料金は別途かかるものの900円台で携帯番号を保持することができます。
また、スマホは格安SIMの安価なサービスを用いることで、月額500円程度から利用することができます。つまり、スマホと携帯の2台持ちとなるわけですが、通信料金の総計は月1400円でこの環境を得ることができます。
携帯やスマホ代のコストを見直す取り組み
格安SIM業者の活用
通信料金を削減するためには、まず大手キャリアから格安SIM業者、つまりMVNOに乗り換える必要があります。格安SIM業者の場合、通信料金は半額以下に抑えることも十分に可能です。また、通話無制限サービスやパケット使い放題と言ったサービスを格安で提供する業者もあります。
なお、大手キャリアはこれを阻止するために、縛りを設けていることが少なくありません。よってこの縛りが解除される期間に乗り換えを行わなければ違約金が発生することになります。
ちなみに格安SIMの初期手数料は3000円程度発生することがありますが、キャンペーンとして無料となっているものもあります。
格安SIM業者との契約がなされると、SIMカードが発行されます。
SIMカードには、主にマイクロSIMとナノSIMのサイズがありますが、最近はナノSIMに対応するスマホが主流となりつつあります。また、今後は物理的なSIMカードを必要としないバーチャルSIMによる提供が普及していく可能性が高いと言われています。
なお、格安SIM業者が、ドコモ、au、ソフトバンクのどの通信インフラを用いているかはあらかじめ把握しておく必要があります。お持ちのスマホが、大手キャリアによってSIMロックがかけられている場合、キャリアに対応するSIMカードを挿入しなければ動作しないからです。
ただし、キャリアに持ち込むことで、スマホのSIMロックを解除してもらうことが可能です。
格安SIMサービスを利用する際の注意点
VNMOの提供する格安SIMサービスにも価格に開きがあるものです。最安であれば月額500円程度から使うことが可能となっていますが、注意しなければならないのは通信速度です。
最安の格安SIMサービスの場合、通信速度が250kbps程度というものもあります。この速度ではおおよそ動画などを視聴することは難しいといえます。また、時間帯によってはWebのブラウジングももたつくことがあるものです。
しかし、LINEを始めとする各種SNSの活用はストレスなく用いることができます。
シニア以降では、おおよそスマホ環境のヘビーユーザーは少ないといえます。インターネットはスマホではたまにしか見ないし、家族とLINEをする程度というのであれば、最低限の通信速度でも十分であり、大手キャリアの通信速度はむしろ無駄であることも少なくないものです。
スマホの選定
先にもご紹介したように、スマホは意外に高額なデバイスです。このため2年毎に買い換えるのは少々無駄だともいえます。
よって、まだスマホが十分に使える状態であるのなら、格安SIM業者に乗り換えるとともに、提供されたSIMカードを、お持ちのスマホに挿入することで、通信量の低減を図ったり、スマホ代を新たに発生させることなく使い続けることが可能となります。
また、大手キャリアが提供するスマホは高額なラインナップ製品が多いことから、独自に格安のスマホを探すという方法があります。
最近では十分なスペックを有するスマホが、新品でも1万円台で購入することが可能となっています。意外に安価に購入できる事実に驚かれる方も少なくありません。それでいて十分に使用できるスペックや品質を備えているものです。
また、スマホの知識に長けた人の中には、型落ちの製品を中古価格で購入し、格安SIMカードを挿入することでさらにコスト圧縮を図ることもあります。格安で中古やモデル落ちの製品を販売する業者も多く、インターネット上で簡単に探し出すことができます。
まとめ
大手キャリアから、NVMOの格安SIMサービスへと乗り換えることで、月々の固定費を大幅に圧縮することが可能となることをご理解いただけたかと思います。
ちなみに、月額650円の格安SIMサービスに乗り換え、通話はIP電話を使用、しかも現在所有するスマホをそのまま用いたとすると、夫婦でも月々のコストは1300円、2年の総計は62400円となります。
よって、2年のコストは、44万円以上も削減することができることになります。
ちなみに、筆者は実際にこの環境を用いています。外出時には、スマホのテザリング機能によりタブレットやノートPCをインターネットに接続して、活用することもあります。また、LINEやTwitterなどのSNSも問題なく使うことができますし、IP電話においても通話の遅延などはほとんどなく使えています。当然のこと、大手キャリアの通信速度は得られませんが、ドコモ系なので通信可能範囲はドコモそのままの環境を得られています。
安ければそれなりの手間や品質の低下は許容する必要はあるかもしれません。しかし夫婦二人2年間に40万円以上の固定費削減ができるのであれば、調べてみる価値は十分にあるとは思われないでしょうか。ちなみに、40万円以上あれば、夫婦二人で海外旅行を楽しむこともできるはずです。
ぜひ、独自に検討してみることをお勧めします。決して無駄にはならないはずだからです。
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