【生活保護】非正規労働者として老後を迎えた単身者が最終段階として生き残る道

シニア年金

昨今、非正規労働者の数が労働人口の4割にもなろうとしています。非正規労働者の場合低所得であることが少なくなく、退職金もありません。

また、年金受給額も少ないことから老後に老人ホームに入居して生活を維持するだけのお金がありません。また、一人の場合介護者もいないことから、老後に大きな不安を感じていらっしゃる人の数は毎年増加傾向にあります。中には「死ぬしかない」といった悲痛な言葉を耳にすることさえあります。

しかし日本において、国民はみな生存権を有しています。つまり、私たちはどのような状況であれ、生きる権利があり、国はこれを保証する必要があります。よって、死ぬしかないわけでは決してありません。

今回は、非正規労働者として老後を迎えた単身者が、最終段階において生活保護を用いて生き残る道についてお話を進めていくことにしましょう。

今後急増することが予想される生活保護受給者

日本において非正規労働者が急増したことの副作用

労働派遣法の緩和により、企業は多くの職種において派遣労働者を受け入れることが可能となりました。派遣労働者であれば、必要に応じて労働力を自由に調整することが可能となります。また、支払う賃金も、正社員に比べて安価で済むため、日本における非正規労働者の数は急増し、いまなお増加傾向にあります。

しかし企業に利益や利便性をもたらす労働派遣法は、労働者に多くの困窮生活者を生み出すことになりました。

非正規労働者の平均賃金は250万円ほどであり正社員の400万円に遠く及びません。このため、貯蓄ができずに年齢を重ねる労働者が増加することになりました。
また、非正規労働者の場合、永続的に仕事を得られる保証はなく、しかも退職金や賞与などもないことから、老後の準備まで手が回らぬうちに高齢者となる可能性が高まります。

一方で、年金受給年齢が後ろへと繰り下げられていることから、生きていくための生活費を得られなくなったり、老人ホームに入所したくてもお金が足りないといった高齢者数が急増することにもなりました。

今後の日本においては、労働人口のおよそ4割の非正規労働者が毎年65歳を迎えることになります。年金受給額が少なく、しかも退職金がなく、結婚ができなかったので介護者もいない人々が、仕事を絶たれて路頭に迷うことになるわけです。

年金受給額が少なく生活は難しい高齢者

昨今、非正規労働者の福利厚生についての整備が進みつつあることから、厚生年金への加入率も高まりつつあります。しかしこれまでの非正規労働者の多くは、厚生年金の対応が図らず国民年金の加入を余儀なくされていた人が少なくありませんでした。

ちなみに国民年金の場合、満額の保険料を収めたとしても、月々の受給額は6万円少々となります。これでは到底生活を維持することはできません。また、厚生年金の被保険者であったとしても、非正規労働者の場合、年収が低いことから、十分な年金額を受給できない人も少なくありません。

よって、後期高齢者となって老人ホームに入りたくても、これでは月々の生活を賄うお金が足りず、結果として入所できない人も少なくないわけです。

非正規労働者の場合単身者が多いのも問題

年収別の婚姻率を見てみると、所得が高いほど既婚者となっていることを確認することができるものです。これについては当然であり、年収250万円以下で結婚をして子供を産み育てるのは困難を極めることでしょう。

よって非正規労働者の場合、単身者の比率が高くなるのは当然といえば当然のことと言えます。しかし問題なのは、これらの単身者が年齢を重ね、高齢者となられていくという点にあります。

高齢者となられて、年金が少ないかもしくはまったくなく、しかも家族もいないわけですから介護者のサポートも受けることもできません。

単身高齢者数は、今後も増加の一途を辿ることになりますが、その多くの方が年金だけでは生活ができず、いわば老後破産の状態に陥る可能性が高いわけです。

年金支給を繰り下げても高齢者コストは減らない

今後の日本は、超高齢化社会を迎えることになります。このため、政府として少しでも高齢者負担を低減させる方法を模索したとしても、ある意味当然のことといえそうです。しかし、年金支給額を低減させたからと、財政健全化に貢献するかと言うと、これは難しいと言えそうです。

年金支給年齢を後ろへとシフトしたり、支給額を引き下げることで、生活が困窮状態となる高齢者数は増えることになります。しかも、高齢者であることから、生活が苦しいからと労働によって再び自立することは難しく、そもそも生活を安定させることのできる仕事はありません。

しかしそれでも生きていく必要があるわけであり、よって生活保護に頼らざるを得ない状況に陥る高齢者数が増加することになります。

ちなみに、65歳を超えた高齢者の生活保護申請要件に「労働」は含まれません。つまり、65歳を超えた人からの申請の場合「その前に働いてください」とは言えないわけです。

今後、高齢者による生活保護受給者は年々増加傾向を辿ることになるはずです。どのような策を講じたとしても、結果的に高齢者コストの低減は難しいわけです。

生活ができなければ躊躇なく生活保護申請を

高齢となられて仕事ができなくなり、生活が困窮してなお、生活保護の申請を好ましく思わない方も少なくないようです。

「国の面倒になりたくない」といった想いがもある一方で「生活保護」が一般に好ましくなかったり、受けることが恥ずかしいと思われているといった背景もあります。

しかし、年齢を重ねて高齢者となった国民に対して、しっかりとしたセーフティネットが用意されていないとすれば、問題は国側にあるともいえます。高齢者にななられてなお、生活に不安を抱えなければならないのは、自己責任を超えた問題が別に存在するわけです。

よって、高齢者となられて生活が困窮し、安心した老後を過ごすことができないのであれば、むしろ何の躊躇もなく生活保護を申請することをお勧めしたく思います。

生活保護要件を理解していおく

生活保護にほ保護要件の設定がなされています。よって生活保護を申請し受給するためには、この要件を満たしている必要があることになります。

この保護要件を証明するための書類が障壁となって、生活保護受給ができない方が少なくありません。しかし高齢者となられれば、生活保護申請の障壁はそれに伴って低くなるものです。ここでは、生活保護要件についてを簡単にご理解いただければと思います。

扶養義務
資産の活用
稼働能力の活用
他方の活用

生活保護要件は上記の通りとなります。これらを簡単に見ていくことにしましょう。

まず扶養義務ですが、生活保護を受ける場合、親族に扶養、つまり被申請者の生活を見てもらうことができる人がいないかについて確認されます。生活保護を敬遠される方の中には、親族に知られることを嫌う人が少なくありません。しかし生活が困窮し、生きていくことができない状態に陥った場合や、老人ホームへの入所が叶わない場合、この点を気にされる段階にはないと思われます。

また、扶養の可能性を問われたとしてもおおよそ誰もがこれを拒否するはずです。単なる事務手続きだと認識しておけば問題はありません。

次の資産の活用ですが、生活保護を受給する場合、最低限の生活に不可欠となるもの以外の資産は事前に処分し、生活に当てる必要があります。ただし、高齢者となられて生活が困窮する方の多くは、資産を持たれていない方が少なくありません。よって多くの方もこの要件は問題なくクリアできるはずです。

稼働能力の活用については、生活保護を受ける以前に「働くことはできないか」との要件となります。しかし65歳以降の高齢者においてこの要件は必要ありません。

他方の活用については、生活保護を受ける以前において他に用いることができるセーフティネットはないかといった確認となります。たとえば、生活保護以前に失業手当などの受給ができないかのチェックとなります。しかしこれもまた高齢者においてはほぼないことから、要件はクリアされることになります。

生活保護の受給が難しいと考えられている方が少なくありませんが、高齢者の場合、おおよそ生活保護申請は受理されるので、保護要件に満たない部分を指摘されたのなら、要件を満たしていることを書面で証明することができればそれでクリアとなり、生活保護の受給は可能となります。

「年金があるから生活保護申請はできない」の誤解

「生活保護を受けて老人ホームに入所したいが、若干ながら年金を受給しているのでそれができない」といった声を耳にすることがあります。

しかしこれは大きな誤解であり、年金を受給していたとしても、健康で文化的な最低限の生活を維持できない水準であれば、誰もが生活保護を申請することができます。

たとえば、月の年金受給額が5万円であり、生活が困窮している場合、生活保護を申請することで、生活に足りない部分の保護を受けることが可能となります。

つまり、年金を受給していたとしても生活ができなかったり、老人ホームの月額費用に足りない場合、不足部分の保護を受けつつ入所することができるわけです。

生活保護を受けることで得られる扶助とは

る生活保護制度を敬遠される方が少なくありませんが、日本の生活保護制度はしっかりとしたセーフティネットであり、生活費を補填してくれるのみならず、各種の扶助を受けることができる制度といえます。ちなみに、以下に示す扶助を生活保護では受けることができます。

・生活扶助 日常生活に必要な費用
・住宅扶助 アパート等の家賃
・教育扶助 義務教育を受けるために必要な学用品費
・医療扶助 医療サービスの費用
・介護扶助 介護サービスの費用
・出産扶助 出産費用
・生業扶助 就労に必要な技能の修得等にかかる費用
・葬祭扶助 葬祭費用

仮に独身のまま高齢者となられ、生活保護申請をするとともに、指定の老人ホームへの入所できた場合、それから以降、医療扶助や介護扶助を受けることが可能となります。また、葬祭扶助を受けることも可能となります。

つまり、至れり尽くせりのセーフティネットであり、お一人の老後生活を十分にサポートすることができる制度であるわけです。

年金額が少ない、家族がいないといったことを要因として、自分は老後を生きていくことは難しいといった結論を出すのは早すぎることがお分かりになるかと思います。

生活保護申請の手順

最後に生活保護申請の手順について簡単にご紹介しておくことにしましょう。

生活保護申請を行うためには、まず、最寄りの福祉事務所へと足を運ぶ必要があります。この窓口において、相談をすることになります。

高齢者であれば、この時点において無碍に突き放されることはありませんが、先にも触れた保護要件に関する質問や、必要書類などについての説明がなされることになります。

お役所仕事であるわけですから、必要となる条件を満たし、しかもそれが証明できなければ生活保護申請を受けることは難しいと言えます。しかしこれは逆に言うならば、保護要件がクリアできれば生活保護を受けることは可能ということにもなります。

要件を満たすことができれば、あとは申請書類を作成してこれを提出すれば良いことになります。しかし、実は申請書類を受け取った段階で、生活保護受給が可能となる可能性は高く、多くの場合受け取りに難色を示されることが少なくありません。

このような場合には、どの部分に問題があるのか、何が足りないのかなどを明確にし、それを満たす形で何度か窓口を訪れる必要があることについては、あらかじめ認識されておいた方が良いかもしれません。

申請書類を受け取った場合、担当者が家庭訪問をして生活状況を確認したり、要件を満たしているかを改めて調査することになります。そして判定をして通知がなされます。

生活保護を受けることができた場合には保護開始決定通知書、却下された場合には保護却下決定通知書が通常は14日以内に送付されることになります。なお、却下された場合や、30日を超えて通知がなされない場合、不服申立てが可能です。また、この場合、再審査請求を行うことも可能となります。

一度却下されたからとあきらめるのではなく、問題点をあぶり出しそれを潰していく形で申請を行うことで、生活保護は誰にでも用いることができるセーフティネットです。

もし老後の生活が立ち行かなくなったなら、躊躇なく活用すべき制度であるといえそうです。

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