あなたも危険!?投資詐欺がシニアの老後資金を狙う

シニアお金

投資詐欺が社会問題化しているようです。特にシニア世代の老後資金を狙う投資詐欺の存在が顕著になりつつあるといいます。さて、あなたは大丈夫でしょうか。

「私はそんな詐欺には絶対に引っかかる事はない」と、他人事で済ましてはいませんでしょうか。そんな人は特に注意が必要だといわれています。

ということで、今回は「あなたも危険!?投資詐欺がシニアの老後資金を狙う」というお話です。

やっと迎えることができた第二の人生

当初の予定からは5年ほど後ろにズレたものの65歳において、あなたは真の自由を手にすることになりました。60歳以降の5年間は、嘱託として働いたものの、切り詰めた生活の結果として、退職金にはまったく手を付けづに第二の人生を迎えることに成功します。

今後は、年金暮しとなりますが、サラリーマンとして働き上げたあなたには、年金受給額のみで十分に生活が回る目論見がすでに立っています。

老後破産などと言った暗い言葉が周囲にはあるものの、あなたはそんな状況とは無縁のうちに黄昏の時期を迎えることができるはずです。

退職金の活用法はまだ決めていないものの、分散投資に老いて堅実に増やしていくことができれば、おおよそ生涯に渡り困ることはなさそうです。そろそろ本格的に投資についても勉強をしてみようかと、ゆとりある日々の生活の中でそう考えています。

友人の投資話を耳にする

ある日あなたは、旧友との飲み会に参加することになります。旧友の中には、株式投資などに詳しい友人もおり、あなたは自分の老後資金の投資についても知識を得ようと考えています。

洒落たダイニングバーに出かけていくと、すでに友人たちは揃っており、話が盛り上がっている様子です。改めて皆の再会を祝してグラスを重ね、そして懐かしい話に盛り上がります。

「ところで、老後の資金を分散投資するためのポートフォリオを考えているんだが、何か効率的な投資先はないかな」
あなたは投資に詳しい友人にそんな話を持ちかけます。
「俺は利回りの良い株式投信かな。まあ、現物株も持って入るが投資の場合元本割れも怖いし、なるべく堅実に回しているよ」と友人が言います。

確かに元本割れは避けたいものだとあなたはそう考えます。
「ただ、不透明な世の中だしね。少額ながら高配当の投資も手を出したりしているけどね」
「高配当?」
「うん。新規事業を手掛ける投資会社があって、一口100万円を投資すると、月利3%を得られるんだよ」
「月利で3%?100万円で毎月3万円になるってこと?大丈夫なのかそれ」
「償還期限は1年なので短期だけど、元本保証をうたっている。でもまあ、どうなるかは不安なので一口のっかっているだけだけどね」
「なるほど。100万程度なら仮に失ったとしても、生活破綻にはなりそうにないね」
「でもこの話、元大臣も絡んでいる話らしいよ」
友人は、与党の実力者の名前を挙げます。
「そういえば、今度その企業の洋上パーティーがあるよ。庶民には無縁のパーティーだけど、一緒に行ってみるかい?」

あなたは友人からその企業名などを聞きます。しかし月利3%は気にかかるところです。あまりに高利回りすぎるわけです。何事も安易には信じることのないあなたは、スマートフォンでその会社のホームページを検索します。

本社屋は大手企業が入るビルにありました。また、経済発展がめざましい国に対しての投資事業を展開しているようで、高い利回りを得ている旨の情報があります。

洋上パーティー

後日、あなたは大型クルーザーで洋上にいます。友人とともにビジターでパーティーに参加したわけですが、参加者は皆身なりもしっかりとしており、セレブの雰囲気が漂います。これまでサラリーマンとして堅実に生きた結果として、いよいよこのような領域に到達できた自分が誇らしくもあります。

パーティーには、友人が話していた元大臣の顔もあり、企業の代表とともに会話を弾ませています。また、よく見るとテレビでよく見る芸能人の姿も数人確認することができます。さらには、人気アイドルが舞台に現れ、簡単な挨拶の後に、持ち歌を披露します。そしてあなたは確信するわけです。

「大物政治家や芸能人、アイドルなども参加するこの企業体は、きっと今後急成長していくに違いない」

しかし、それでもあなたは出資には消極的でした。ただ、100万円の投資で、毎月3万円のリターンがあります。実際に友人はこれを受け取っていることを確認しています。

元本が保証された100万円で、月々の小遣い程度を稼ぎ出すことができます。また、万が一元本割れしたとしても、最大で100万円の損失に限定されます。
まんざら悪い話ではないのではないかと、あなたはそう考え出資を決意します。

出資先が正しかったことを確信した3ヶ月後

出資から3ヶ月後、あなたの口座には毎月3万円のお金が振り込まれます。企業側からは、短信としての通知も届き、多大な投資効果が期待できるとの情報もあります。

また、5口以上の投資において月利4%が保証される増額の商品が新たに開設をされることを知ります。5口で500万円だとすると、その4%ですから、月々のリターンは20万円にもなります。年間実に240万円になることになります。

早速友人に電話をすると、さすがに100万円以上はリスキーだといいます。あなたは一度、その言葉に従って、増額投資はやめようと考えます。しかし月20万円のリターンは流石に魅力的です。

あなたは実際にこの企業を訪問してみようと思い立ちます。

立派なオフィスと端末の数々

ある日あなたは、投資会社に電話をかけます。実際に訪問をすることは可能かと問い合わせると日時を指定されます。そこであなたはその時間に投資会社を訪れます。

大手企業がのきを連ねる高層オフィスの一角にその企業はあります。広報担当があなたを歓迎します。見学者は他にも7,8人がいます。オフィス内を見学しつつ、事業内容についての説明を受けます。

オフィス内には、多くスタッフが忙しく働き、端末には常に様々なチャートが表示されています。投資利回りを高めるために、あらゆる市場に対してトレーディングを仕掛けているとの説明を受けます。

あなたはその雰囲気に圧倒されます。そしてその場で5口までの増額投資を決意し、その日のうちに400万円を追って振込を完了します。これで翌月からは月20万円のリターンを得ることができるはずです。

実際に振り込まれた20万円

翌月の月末、あなたは少々不安な一日を過ごすことになりました。実際に4%の月利など得られるのだろうか。あなたは不安でなりません。しかしそんな心配が無駄であったことをあなたは知ります。

口座にはしっかりと20万円が振り込まれていたからです。これで1年間は毎月20万円を得ることができます。また、償還期日を伸ばすことで、この額を最大3年まで伸ばすことも可能となるようです。

あなたは、投資の素晴らしさを実感するとともに、投資の資金を持つことの素晴らしさや、それを手にすることができた自分を誇らしく思います。

「私の老後は安泰だ」

あなたはちょっとした幸福感を味わいながらも、夜にはちょっと高いスコッチでも飲もうかとそんなことを考えていました。

5ヶ月目のトラブル

20万円は、その翌日も期日通りに振り込まれています。その口座には手を付けていないので、およそ50万円もの残高が積み上がっています。投資の素晴らしさを実感しつつも、あと5口増やせばそれだけで、豊かな生活が可能となると考え、判断が揺れます。

その月は、妻と国内旅行を予定していたので、その資金にこの利回り分を当てます。1週間程度の温泉巡りでしたが、移動はすべてグリーン車であり、旅館はいずれも有名どころです。

旅行のプレゼントには妻も喜びます。投資の利回りであることはそれとなく伝えています。つまは投資に対しての知識はなく、すべてはあなたの判断に委ねています。

あと5口をどうしようかと考えているうちに5ヶ月目の月末を迎えます。しかし、ここでトラブルが発生することになりました。利回り分の20万円が振り込まれていないのです。

あなたは早速、投資会社の窓口に電話をかけます。ところが、その電話が繋がりません。
「どういうことだ?」
そこであなたはその翌日投資会社を訪れます。

ところが、そこにはあったはずの会社がありません。ガランとしたオフィスには、多くの人がいるものの、それはスタッフではなく、自分と同様に投資をした人々であることを知ることになります。

露呈される投資詐欺と被害の事態

その数日後、新聞各紙が投資詐欺を記事にします。また、マスコミがこの会社について調査を開始します。元大臣についても取材がなされますが、自分も被害者である旨を会見で発表します。

芸能人やアイドルについては、事務所経由で依頼があったため、営業の一環として参加したに過ぎないことがわかります。

しかしあれだけの規模のスタッフはどこへ消えたのかが気になるところです。ところがこれについても、スタッフが特定され始め、それが短期アルバイトであることが記事となります。

また、代表者は海外逃亡の末に行方がつかめないといいます。出資額を返済してもらおうにも、そもそもその投資会社が消滅してしまっています。

被害者は、弁護士を介して返還請求をしますが、投資額を全額戻すのは難しいとだろうということです。結果としてあなたはおよそ450万円の投資詐欺の餌食となったわけです。

ありきたりなポンジスキームの実態

実はこの手の投資詐欺の歴史は意外に長く、そのルーツはポンジスキームと呼ばれています。大々的なキャンペーンと広告費を投じ、投資詐欺集団は一気に投資金額を集めます。当然のこと、オフィスやスタッフの人件費、洋上パーティ、芸能人の費用などは、投資名目で集めた資金の一部によってなされています。

ところが投資の実態はなく、月利は投資で集めた金額から単に返金をするに過ぎません。一気にお金をかき集めるのと同時に、彼らはどのようなルートで逃亡するかを考えているに過ぎません。

このケースでは、短期勝負のスキームとしての計画がなされており、その計画そのままに、会社は消滅し、そして代表者は雲隠れを決め込んだにすぎません。

投資詐欺とは、あくまでも短期に信用を勝ち取るとともに、あとは集めた資金を如何にして掴んで逃亡するかのスキームと言えます。よって、もっともらしい演出にはお金を掛けることで、より多くの投資額をかき集めます。つまり、華やかさにこそ、詐欺の意図が盛り込まれていたというわけです。

「儲かる」という言葉があります。儲かるとは、人に言う者と書きます。つまり、儲かるのは何かを人に伝えた側にもたらされるものです。また、儲かるとは信じる者とも読むことができます。信じる者からどの程度の資金を調達できるかという側面において、人に言う側の人が儲かることになるわけです。

よって、このような儲け話があったなら、それは詐欺商法であることを疑う必要があります。そもそも月利数十%の投資先があるのであれば、わざわざ経費を掛けて多くの人を集める必要などないはずです。誰にも伝えることなく、自分自身で回し続ければ、膨大な資金とすることすら容易であるはずだからです。

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