サラリーマンとして働くことが普通ではない過去と未来

シニアお金

現在普通といわれる働き方

日本において、普通といわれる働き方とは何でしょうか。日本の労働力人口を見てみると、ざっくりとした数値で恐縮ですがおよそ6千万人強となります。ちなみに労働力人口とは、15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口といった定義付けがなされているようです。

日本における労働力人口は、男女ともに近年増加傾向にあります。その一方で完全失業者はここ9年程度減少傾向にあるといいます。

これは景気浮揚から仕事が増えたという説もあるようですが、大黒柱の所得が揺らいでいることから、扶養家族にも働く必要性が生じてきているといった見方もあります。

さて、就業者の中でサラリーマンの割合を調べてみると、正規非正規を含めておよそ8割強がサラリーを得る労働者ということになっているようです。ということは、日本の社会における働き方の普通とは「サラリーマン」ということができそうですよね。

ということで、現在生活費を得るための一般的な方法は、企業などに雇用されて働くということであるわけであり、中には「他に方法があるわけ?」と思われる方もいらっしゃることでしょう。

普通ではない?過去のサラリーマンの働き方

ところが時代を大正時代まで巻き戻してみると、サラリーマンの割合は5%程度に留まることになります。その後サラリーマンの割合は増えていくものの、昭和初期には30%程度であったようです。

つまりサラリーマンとして働くことは、近年までは普通ではなかったわけです。

このなごりは、私自身言葉として経験しています。というのも、まだ若い頃に地方の農村を訪ね、農家の人とお話をする際に決まってきかれた言葉がありました。

「どこから来たね?」
「東京です」
「じゃあ、勤め人さんかい?」
「ええ。まあそうです」
「ほお。それは立派なもんだ」

とまあこんな感じです。昭和後期の頃の話ですが、この当時、地方の農村地区においては、サラリーマンが一般化していたわけではなかったわけです。

まあ、地域によっては現在も同様かもしれませんが、サラリーマンを勤め人と呼び、しかも勤め人は、毎月給与を安定して得ることができるから立派な働き方であると、農家の人たちはそう口をそろえたわけです。

資本主義社会の根幹に存在する収益モデル

フロー型モデルのサラリーマンとしての働き方

サラリーマンの場合、あらかじめ給与額がおおよそは決定されているものです。また、出勤日の設定もあり、就労規則を守ることで月末には一定の給与を得ることができます。

つまり、自分の時間を切り売り、企業に対して労働を提供することにより、その対価の給与を得るという働き方かといえます。そしてこの働き方は、フロー型モデルに属するといえます。

フローとは流れの事であり、流れの中でお金を得る方法ともいえます。労働と収入はおおよそ直結しており、働けばお金を得ることができる一方で、働かなければお金を得ることができません。

「そんなの当たり前だろう」と、サラリーマンの働き方のみを経験されてきた方であればそう思われるはずです。

資本主義社会の根幹をなすストック型モデル

でも、資本主義構造は、実は労働によって資本を構築する方法ではないという点にも目を向ける必要があります。もともと資本主義は、資本家サイドが考案したモデルといえます。よって、お金を得る方法として「労働=お金」という考え方は資本主義の根幹にはないんですね。

資本主義とは、経済的な利益追求行為や生産手段の私的所有を根幹としています。そしてこれらを以てして労働者を使うことで生産を行う経済体制を言います。つまり、資本主義における利益追求とは、資本を持つとともに労働者を使うことによってなされるものであり、フロー型ではなくストック型が基本となっているわけです。

さて、ではこれ、誰が行っているわけでしょうか。

これは、先に挙げた8割強のサラリーマンではなく、その外側にいる人々ということになります。ちなみに労働力人口の中でおよそ14%が会社役員もしくは経営者となっています。つまり労働者ではなく雇用者です。また、雇用者の中の5%が社長であるといった数値があります。

さて、社長とて労働は必要ですよね。むしろ起業立ち上げ時には、1日24時間1年365日働き続ける意識がなければビジネスを軌道に乗せることは難しいといえます。しかもそれでいて、当初は給与を得られないことが少なくありません。

彼らはなぜそこまで働くのでしょうか。

彼らはフローの拡大を図ると同時に実はストックを積み上げようとしています。それは顧客や信用かもしれません。自社製品やその生産体制かもしれません。フローを拡大したのならその一部を用いて人を雇い入れて労働力を増大させることもあるでしょう。

つまり、資本を膨らませ、その資本によってお金を得るための仕組み自体を作り上げようとしているわけであり、「労働=お金」といったモデルを追求しているわけではないわけです。

サラリーマンとしての働き方の未来

普通ではなくなりつつあるサラリーマン

では、今後もサラリーマンとしての働き方は普通であり続けることができるでしょうか。業種や業態によっては、労働力が不可欠なものもあり、よってサラリーマンの働き方がなくなってしまうことはないかと思います。

しかし、サラリーマンのイスは、今後大幅に減少することが予想されていますし、実際に現在ではその兆候が各所に現れ始めています。というのも、現在では人の手を借りずとも成立してしまうビジネスモデルが急速に拡大しているからです。

たとえば、ネットで商品を注文しそれを受取るまでの工程において、あなたは誰とお話をするでしょうか。たぶんは、商品を届けてくれた宅配便の人と一言二言会話を交わすのに限られているはずです。

では、誰が注文を受けているかというと、それはWebサービスが行っています。つまり、人に代わってシステムが対応しているわけです。

企業側では、システムがうけた商品をピッキングしてコンポし、発送するという作業が発生しています。これらは部分的に人の手が介在することもあります。しかしこれらとて、急速に自動化率が高まりつつあります。

また、最近ではオフィスワークの職を探すためには、少なくとも大学は卒業している必要があります。これはお若い方であれば「当たり前」のことかもしれません。
しかし、オフィスワークの職を得るのに学歴を必要としなかった時代も日本にはあったのです。

今後は、人工知能の活用領域がさらに拡大することになります。オフィスワークにおいては、その多くが自動化されていくはずです。

大手銀行の文書管理部署が、まとめてリストラされたといったニュースも記憶に新しいところですが、この作業などは、現代では人がやるよりもむしろ人工知能が処理したほうが早いわけです。

同様にコンサルや診断などの分野の職種も減少傾向をたどるはずです。

また、今後は自動運転車の精度も急速に向上していくことでしょう。すると、ドライバーの類の職種は徐々に減少していくことになります。

企業が労働力を必要としなくなる日

企業の多くの業務が自動化され統合化されるわけですから、これまでのような労働力を得なかったとしても、資本家はストックを構築し、それによって利益を得ることができるようになりつつあります。

人工知能を始めとするシステムを用いれば、開発費を投じる必要はあるものの、人件費がかからないわけですし、しかも1日24時間働かせ続けることができます。また、労働組合といったものも不要となるわけであり、資本家からすればストックを構築しやすい環境が整うわけです。

実際に、最近株式上場をはたたす企業の中には、社員数が100人に満たない企業もあります。この程度の労働力でも、大きな資本を動かす環境が実現しつつあるわけです。

サラリーマンが減少した未来の働き方

となるとサラリーマンのイスは今後も減少を続けるわけですから、現在8割強の働き方であるサラリーマンの割合は今後右肩下がり状態を続ける可能性が高いといえます。

つまりサラリーマンとしての働き方が普通ではなくなり、
「勤め人さんかい?立派だね」
と、サラリーマンであるだけで立派だねといわれる時代が到来する可能性も否定できないわけです。

今後の人々は、サラリーマンとしての職からあぶれる可能性があるわけですが、これまで「労働=お金」といったフロー型労働を基本としてきた人々は、どのような形で生計を得ていけばよいのでしょうか。

仮に「労働=お金」といったスタイルを守りたいと思われるのであれば、クラウドソーシングや今後の拡大が確実視されるギグエコノミーの立ち位置を狙っていくという方法が考えられます。

クラウドソーシングとは

ちなみにクラウドソーシングとは、クラウド(群衆)とソーシング(業務委託)からなる造語であり、つまりは、業務発注者がインターネットを介して不特定多数の人に対して仕事を依頼する雇用形態のひとつといえます。

最近ではクラウドソーシングの情報を提供するサービスも日本には多く存在します。また、クラウドソーシングで仕事を得ることで生計を立てる人も増加傾向にあります。

職種としては、原稿の執筆、データ入力、Webデザイン、Webサービス、システム開発などが存在します。これらにいち早く参入しておくことで、収入を得る立ち位置を確保しておくのも良いかもしれません。

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ギグエコノミーとは

一方で、ギグ(gig)とは、ジャズの単発ライブ演奏を指す造語ですが、現在では単発や短期の仕事を指す言葉として一般化してきていて、単発や短期の仕事を、スマホで発注したり受注するサービスも増加傾向にあります。

ちょっとした買い物や届け物を人に依頼したり、それを受けたりといったことが個人間でもスマホでできるサービスが拡大していく可能性があることから、早めにこれらのインサイダーとなることで、生き残りを図るというのも方法としてはありえますよね。

一方、資本主義社会に生きるわけですから、ストック型のモデルを考え出すことで、資本家サイドへと移行するという方法も十分に考えられます。

ストック型の場合、フロー型とは大きく異なる収入獲得手法であることから、気楽に参入してすぐに利益を得られるほど簡単なものではありませんが、今後サラリーマンとしての働き方が減少傾向をたどるのであれば、いち早くそんな収益モデルを手にされておくのも、生き残りをかけるうえでは有効な方法なのではないかと考えています。

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まとめ

本ブログは、ミドルやシニアの方に向けた情報を発信しています。このため、アクセスユーザもまたミドルやシニアの方が多くなっています。

ミドルやシニアの方の場合、今後の働き方に大きな変化が生じたとしても、それはご自分の人生を大きく左右するほどの影響は受けにくいかもしれません。なぜなら、既にサラリーマンとしてのある程度の地位を確保し、今後は年金暮らしへと移行するプランがしっかりと出来上がっている方が多いからです。

しかし中には、今後も住宅ローンの返済があったり、婚期が遅かったことから子供がまだ小さいという方、さらにはリストラなどにより正社員の座を奪われてしまった方もいらっしゃるかもしれません。

このような方々からすれば、働き方に変化が生じたとしても、今後も働き続ける必要があります。つまり、どのような環境になろうとも、日々の生活費を稼ぎ出す必要があることにはかわりはないわけです。

サラリーマンのイスが減少傾向をたどる中で、働き続ける必要性がおありであるならば、サラリーマン以外の働き方について、今から学んでおくことや、実際に参入してみる必要性は高いものと考えています。

というのも、困ったときに切り替えていては、経済的に困窮状態を招いてしまうリスクがあるからです。

よって、クラウドソーシングやギグエコノミー、さらにはストック型の収益手法については、今からでも十分に知識をつけておく必要があろうかと思います。それは、きっと転ばぬ先の杖と成り得るものだからです。

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