安定した老後を迎えるためになるべく早くから始める教育費負担軽減対策

シニア準備

昨今、シニア世代に破産状態へと陥る人の数が急増しています。その要因を調査すると、お子さんの教育に多大な費用を投じたことの影響をシニア以降になって被ってしまうというといった方が少なくないようです。

また、最近ではお子さんが大学を卒業した以降、奨学金の返済が滞り、親子共倒れとなるご家庭も少なくありません。さて、これらの悲惨な現状を回避するためにはどのような準備を行っておくべきなのでしょうか。

今回は、安定した老後を迎えるためになるべく早くから始める教育費負担軽減対策というタイトルでお話を進めていくことにしましょう。

子供を大学へと進学させるためのおおよそのコスト

入学以前からかかる多大な費用

親御さんとしては、なるべく高い水準の大学へと進学させたいと考えるはずです。このため、進学塾などへ通わせる方も少なくありません。また、それとは別に夏期、秋期、冬期の講習や、入試直前対策などもあります。

月およそ3万円程度、季節講習に10万円程度で年間50万円程度の費用を塾に投じるご家庭が多いようです。

意外に負担が大きい受験費用

受験生の多くは、志望大学以外に滑り止めとして複数の大学を受験します。受験生の平均受験校数はおおよそ5校であり、それ以上の大学を受験する受験生も少なくありません。

国公立大学を受験する場合、センター試験を受験する必要がありますが、2教科以下で1.2万円、3教科以上で1.8万円の受験費用がかかります。また、2次試験には1校あたり1.7万円となります。

私立大学や一般入試の場合おおよそ4万円程度、歯学医療系では6万円以上のコストがかかる場合もあります。

また、地方から首都圏に出て受験をする場合、交通費や宿泊費などもかかります。最近では親御さんが付きそうことも少なくありませんが、二人分のコストがかかるわけです。ちなみに、遠方の大学受験も想定した場合の、平均的な受験コストは25万円程度にも上るのです。

大学への進学費用はいくらかかる?

そもそも大学への進学費用はいくらかかるのでしょうか。親御さんが大卒でない場合、あまりイメージできないかもしれません。また、大学を出ている方であってもご自分の頃のコストで算定されている場合、それを大きく上回ることもあります。
というのも、昨今の大学費用は、一昔前よりも大幅に増えていることが少なくないからです。

以下ではおおよそのコストをまとめています。国公立、私立で大きく異なります。また、文系や理系でも異なることをご確認いただくことができるかと思います。

大学 入学金 施設設備費 年間授業料 初年度コスト計
国公立 30~40万円 55万円 100万円程度
私立文系 30万円 20万円 80万円 130万円
私立理系 30万円 20万円 120万円 180万円
私立医療系 100万円 100万円 300万円 500万円以上

学部や大学などによって異なることからここではあくまでもザックリとした形でご紹介しています。よってこれ以上の費用が発生する可能性は十分にあります。

また、これ以外にも最近ではノートPCやタブレットなどの購入を進められることが少なくなく、教科書その他で30万円程度のお金が別途かかる場合があります。

下宿やアパート暮らしの場合の生活費

自宅生の場合、食費や居住費はこれまでと同等であり、交通費や書籍代などの負担増にとどまることでしょう。しかし下宿やアパートを借りて生活をする場合、敷金や礼金、さらには生活に最低限必要な家電製品や家具、日用雑貨などがかかります。

また、一人暮らしがスタートした以降は、食費や住居費、交通費、公共料金など、一人が生活を単独で維持するための全コストが負担増となります。

ちなみに、大学生の一人暮らしの場合、毎月の平均コストは11万円程度となります。このうち親御さんが仕送りとして負担する額はおよそ7万円程度といわれています。

結果としていくらかかる?

さて、ではお子さん一人を大学入学から卒業させるまでには、平均してどの程度のコストが発生するでしょうか。

以下は、一般的な私大理系を目指すお子さんが実際に入学から卒業までにおいてのコストを、親御さんの負担面からザックリとまとめたものです。

ちなみに、現役での進学を想定しており、浪人などの場合には、予備校の費用を別途捻出する必要があります。

高校3年受験対策から大学入学初年度のコスト計

入学前(高校3年) 進学塾などのコスト 50万円
受験時 5大学受験交通費宿泊費計 25万円
入学時 入学金と施設費用 50万円
前期授業料 60万円
アパート敷金礼金含む 50万円
就学時 後期授業料 60万円
年間仕送り額 80万円
【合計】 375万円

ちなみに、高校3年から受験生として発生する進学塾などの授業料から、受験コストや入学金、さらには前期後期授業料、アパートなどの費用、さらには年間仕送りなど、大学入学1年までの2年間のコストだけでも400万円程度のお金が必要となります。

また、2年から4年までの学費ならびに仕送り計は、200万円×3=600万円となり、総計で1千万円のコストがかかることになります。

あくまでも総計ではあるわけですが「うちの子を東京の私立大学に」といったありがちな親御さんの想いには、多大なお金がかかることになるわけです。

お子さんを大学に進学させるためのコスト削減策

ここまでお読みいただいた段階において、お子さんの大学進学には多大なコストがかかることをご理解いただけたことでしょう。また、実際にお子さんを大学に進学させた経験をお持ちの方であれば、これまでの負担がかなり大きかったことを改めて実感されたかもしれません。

しかしこれまでご紹介したものは、地方の方が首都圏の私立大学に進学した場合の平均的コストを例にしています。よって条件を変えることで、この値はいくらでも削減することが可能となります。つまり、多大なコストがかかることを理由に、お子さんの大学進学をあきらめる必要はないわけです。

次に、お子さんを大学に進学させるためのコスト削減策を考えていくことにしましょう。

学資保険の活用

もし、お子さんがまだ小さく、大学進学までに十分時間があるというのであれば、学資保険の活用により、進学時の負担を軽減することが可能となります。

現在では、数多くの保険会社が学資保険としての商品を取り扱っています。学資保険は、毎月一定額の価格を銀行口座から引き落とす形で教育資金を積み立てるものです。

お金は、あらかじめ決められたタイミングで受け取ることができます。また、支払期間中に契約者が亡くなった場合、その後の保険料の支払いは不要となり、将来受け取ることのできる保険金の額は保証されます。

早期に学資保険に加入しておくことで、多大なコストが発生する時期においても、家計に無理なくお子さんを進学させることができることになります。

スカラシップ制度の活用

経済的にとても捻出できそうにないと思われるのであれば、お子さんの成績を徹底して向上させておくことで、教育コストを低減させることが可能となる場合があります。

まずは、大学のスカラシップを活用する方法です。スカラシップとは、奨学制度に基づいて、学生を援助するために付与される給付金、もしくはその制度を言います。

大学では各々スカラシップ特別入試に対応しています。この入試に合格することで、学費が全額補助されたり、半額程度が負担されるなどの待遇を受けることが可能となります。

国公立大学への進学を検討

学力的に優位性を持つことができれば、国公立大学への進学を検討することで、大学の授業料を大幅に圧縮することが可能となります。

学部によっても異なりますが、国公立大学の場合、入学金も含む授業料は4年間でおよそ250万円程度となります。

私立大学においては、入学金を含めておよそ450万円程度の授業料が発生するはずなので、単純に比較したとしても200万円のコストを削減することができるのがわかります。

国公立大学の場合、寮費も格安で済ませることが可能です。ちなみに2から3万円程度のコストがあれば、食費をふくめて生活を維持することができる場合もあり、これはお子さんご自身のアルバイトによって賄うことができるレベルです。

自宅から通うことのできる大学への進学

これについては、お子さんの意向もあり、また、目指すべき大学や学部が地元にはないなどの問題もはらむため、一概に実現できることではありませんが、お子さんを自宅から通うことのできる大学へと進学させることで、少なくとも寮費やアパート代などのコストは削減することができます。

学生ローンの活用

準備もなくお子さんの進学時期を迎えてしまった場合、進学を果たすためには学生ローンを活用しなければならなくなります。これまでの学力によっては、金利負担なしの奨学金を借りることもできますが、おおよそは有利子負債となるはずです。

学生ローンは、後にお子さんが長期的に返済する必要があるわけですが、大学を出ても正社員となれない場合や経済的な知識がない場合、返済が滞ることもあります。

学生ローンを借りる場合、おおよそは親御さんが連帯保証人となるため、お子さんの返済が滞ってしまうと、親御さんに一括弁済がかかることになり、結果として親子ともども自己破産となることも少なくありません。

共倒れを防ぐために、連帯保証なしで学生ローンを借りる方法があります。この場合、月々の手数料が発生しますが、お子さんの滞納がそのまま親御さんの一括弁済へと及ぶリスクは回避することが可能となります。また、今後の学生ローンは、一定額の手数料が必要なものの親御さんの連帯保証を必要としないものへと移行する動きがあります。

しかしそれでも、お子さんは長期にわたって返済義務を背負うわけですから、事前に返済計画をしっかりたてるとともに、親御さんも最大限サポートすることが必要となることでしょう。

ちなみに、学生ローンに関しての取材の際に、大学時代に450万円の学生ローンを借りたものの、入社後4年間でこれを返済した人とお話をする機会がありました。

彼は、この4年間を実家で過ごすことで生活コストを抑えたといいます。また、親御さんも積極的に返済をサポートしたといいます。

返済計画をしっかりと立てることで、比較的短期間で学生ローンの完済を実現するケースもあることをここではご理解いただければと思います。

なお、お子さんの学費を全額学生ローンで賄おうと考えられている親御さんもいらっしゃいますが、入学にかかわるコストは学生ローンを使えない場合があるので注意が必要となります。学生ローンは、入学後に申請する必要がありますが、入学を果たすためには、入学金をすでに支払っている必要があるからです。

格安で大学を卒業したケース

取材中におおよそコストをかけずに大学を卒業した方にもお話を伺うことができました。彼は、実家から通える国立大学をターゲットとして、しかもスカラシップの活用により学費負担を最小限にとどめています。

自宅からの通学であったことから、交通費は発生したものの、これについては自らのアルバイト費用で十分に賄えたといいます。また、その他の生活費はいままで通りであったことから、親御さんの負担が増すことはありませんでした。

大学卒業後は、地元に本社のある上場企業への就職が決定しています。

お子さんの意向などもあることから、このような形でコスト削減が可能となるとは限りませんが、しっかりとした学力を持つことで、大学のコストを最小限に抑えることは十分に可能なのです。

まとめ

お子さんの大学進学による負担を軽減させるためには、お子さんが小さいうちから学資保険などを加入しておくことが有効な手段といえます。

また、同時にお子さんの学力を引き上げておくことも有効な手段です。秀でた学力があれば、スカラシップなどを活用することで学費免除で学位を取得することが可能となるからです。さらには、学力があれば国立大学などに進むことで、安いコストでしっかりとしたステータスや就職先を得ることができることでしょう。

学生ローンを活用する際には、手数料を支払っても親御さんが保証人にならないことで共倒れリスクを回避することができます。

それでもお子さんに弁済義務は生じることから、計画的な返済ができるように親御さんがしっかりと教育を施すとともに、返済のサポートも行い、いち早く完済することを目指す必要がありそうです。

コメント