比較的順調にサラリーマン生活を継続することに成功していたミドル層が、シニア層になった段階において極度な貧困状態へと陥るケースが増えているようです。年々生活水準を上げ続け、それがむしろ自分の成功の証と考えていた方が、シニア以降において、貧困状態や破綻へと追いやられてしまうというものです。
「給与も高額だし順調に回っているのに、そんな状況に陥るはずがない」
と、そう思われるかもしれません。しかしシニア以降には、全く想定していなかった変化が訪れることもあるため、あらかじめそんな事態を想定していないと、うまく対応できないこともあるようです。
サラリーマンに意外と多いその日暮らし族
「その日暮らし」は、もともと日雇い労働者が陥る状況と言えます。日々働いてはその日に日給を得ます。そしてその足で飲みに行ってお金を使い果たすというものです。よってサラリーマンの場合、そんな不安定性とは皆無のように思われます。
しかしサラリーマンの方々の中にも、その日暮らし族は意外に多いものです。しかも平均的なサラリーマンの年収を上回る層の中にも、このような方々は少なくありません。
その日暮らしに陥りやすいサラリーマンの特徴
正社員雇用のサラリーマンの場合、毎月の給与もあり、ボーナスもあります。長年働けばそれなりの退職金を手にすることもできるはずです。業態によってはミドル以降もそれなりの月収を得ることができることでしょう。
しかし毎月一定額のお金を得ることができる状況には、ひとつの落とし穴があります。
その月に多少出費がかさんだとしても、給料日まで待てば翌月の給与を得ることができます。また、毎月安定した給与を得ることができることから、その範囲内であれば生活水準を引き上げることも容易です。
これは同僚も同様であり、同僚の一人が大きな家を手に入れたり、高級車を購入した場合、「どうせ給与に差がないわけだし、あいつにできて自分にできないことはない」との考えに至りやすいのです。周囲の人々の刺激に触発され、生活水準を引き上げやすいわけです。
ところが、大きな買い物はおおよそローンによってなされることになります。すると翌月からは高い金利の乗った返済を余儀なくされることになります。
ここで返済分だけ生活水準を落とすことができれば、収支バランスの安定を保持することができます。ところがこれがとても難しいわけです。
また、あれこれと債務が膨らんだ状態において、お子さんが私立の学校へと進学することになります。周囲のご家庭もそうしているからという理由から、我が子もということになります。
気がつけば、給与が高いはずなのに、貯金はおろか、月々の生活費にも困窮する状況を迎えてしまうわけです。
その日暮らし族回避に「節約」は役立たない
さてでは、安定しているはずのサラリーマンが、その日暮らし族に陥いるのをあらかじめ回避するには、どのような対策を講じておけば良いでしょうか。これについては、おおよそその答をすでにお持ちであるはずです。
「そりゃわかるさ。節約生活をすればいいんだろ?」思われるでしょうか。
確かにこれがある意味正解と言えます。しかしでは、実際に節約生活に取り組み、うまく事が運ぶでしょうか。
多大なストレスを抱えながらも、やっと節約して残った数千円は、その他の出費に消えてしまってはいませんでしょうか。
その日暮らし族に陥らないために
その日暮らし族に陥らないためには、実はひとつのことを守っていただければそれだけで事が足ります。これについては別記事でもご紹介していますが、「収入=支出+貯蓄」を毎月遵守し続けることです。
サラリーマンの場合、おおよそ給与は毎月一定額が振り込まれます。このため、収支バランスは比較的取りやすいものです。
このため、支出部分を徹底してチェックし、必ず「収入=支出+貯蓄」の状態を毎月キープし続けることで、毎月貯蓄額が積み上がり続けることになります。
逆に言うならば、「収入=支出+貯蓄」の状態を保持できない債務を抱えたり、大きな買い物は避けるべきと言えます。なぜなら、この状態こそが、あなたが可能な本来の生活水準であるからです。
収支バランスを崩してしまうリスク
日々必死に働き豊かになることは、サラリーマンに許されたささやかな夢でもあります。また、ご自分の父親もまたそんな生き方をされて定年を迎えているはずです。このため、それが間違いであると認識するのは難しいことでしょう。
しかしこの夢の実現は、あくまでも毎年給与が昇給することが前提となります。
「収入<支出」のリスク
もし生活水準を上げることで「収入<支出」といった状況に陥ってしまうと、その時点で債務がかさみ始めることになります。また、すでに貯蓄に回すべき余力もないことから、その日暮らし族へと陥ることになります。
毎月の給与の多くが返済に消え、生活費の捻出にも苦慮する状況がその先にはあるわけです。
「収入=支出」でも危ない理由
「いや、ウチは債務はない。きっちりと給与分を支出しているし問題はない」
と、計画的な支出に毎月終止するサラリーマン家庭も少なくありません。しかしこのようなご家庭も、かなりの綱渡り状況を余儀なくされることになります。
現在は、高度経済成長期とは異なり、ミドル以降は給与が減額されることもあります。また、50代で給与額が頭打ちとなり、それ以降の昇給が望めない企業も少なくありません。さらには、昨今のミドル以降のサラリーマンの場合、リストラにあうリスクも皆無ではないわけです。つまり、現在の収入額を定年まで保持できる確証は極めて薄いわけです。
懸念すべき問題はまだあります。それはミドル以降、定年を迎えるまでの間、支出が増大する可能性がある点です。
ミドル以降になると、お子さんが高校、大学へと進学します。国公立であれば負担もさほどありませんが、家から通うことができない私大に進学した場合、コストは一気に膨れ上がるものです。
計画性を持ったご家庭であれば、あらかじめこれらのコスト分を積み立てているかもしれません。それでも、寮費や生活費の仕送りなど、想像以上のコストに、日々の支出は膨れ上がります。
収入が一定でありながら、支出が膨れ上がるわけですから、収支バランスを維持することが難しくなる可能性が高いわけです。
生活水準を上げたままのシニアに遭遇するリスク
徐々にではあるものの、生活水準を引き上げ続けている場合、定年退職を果たした以降に困窮状態を招くこともあることに注意を払いたいものです。
多くのご家庭では、これをうまく切り抜けていくものです。では、リスクを回避するご家庭と被るご家庭では、どのような相違点があるのでしょうか。
教育費増大を機に以降生活水準に歯止めをかけるケース
お子さんが大学へ進学し、それなりの仕送りや寮費などにコストが増大するご家庭の多くは、この段階で生活水準の向上に歯止めがかかるものです。活にゆとりを持ちたくても、その余裕がないからです。
このようなご家庭の多くは、お子さんが独立して教育費コストがかからなくなった以降も、苦しかった時期の生活水準を維持し、余剰資金を積み立てることで老後資金を積み上げるものです。
この場合、以降の支出増大局面はおおよそありません。想定外の出費がある場合でも、貯蓄や退職金などを用いることで、リスク回避を図ることができることになります。
また、この年代となると、物欲も低下することから、一般に少ない支出で生活を楽しむすべを見出すことができるものです。
なかには存在する生活費頂点で老後を迎えるケース
割合としては低いものの、中には生活費を上げ続けた状態において老後を迎えるご家庭もあります。住宅ローンも完済し、お子さんも無事独立しています。よって自由になるお金が増え、生活にゆとりがある状態で老後を迎えることができるわけです。
また、定年時には退職金として、まとまったお金も入るわけですから、当面のお金にも困ることはありません。
「余剰資金で投資でもしてみようか」とお考えの方も少なくないようです。
しかし、一方向に生活水準を引き上げ続けたご家庭の場合、老後以降の収入の大幅な縮小にあわせて収支バランスを取ることが難しいようです。
近隣の目もあり、また、豊かさを誇示し続けたプライドもあります。意外なことですが、収入がほぼゼロとなり、年金暮らしとなった以降も「収入+貯蓄の切り崩し=支出」といった形でこれまでの生活水準を維持しようとされるご家庭もあるのです。しかしこれでは、いずれ生活は破綻することになります。
老後においても「収入=支出+貯蓄」をキープすることこそが、生涯に渡って困窮状況を回避する術であることを、ぜひご理解いただければと思います。
生活水準の見直しは早いほど良い
「そうはいってもいきなり生活水準を落とすのは難しいのでは?」と、感じられる方も少なくないはずです。
確かに、いきなり生活水準を落とすことは、まず難しいと言えます。生活水準を上げれば、それだけ固定費もかさむことになります。
固定費は文字通り毎月発生するものなので、これをひとつひとつ見直さない限り、削減することはできません。つまり、時間がかかるわけです。
また、固定費を削減する上では、これまで得ていたサービス品質の享受を捨てる必要があることから、意外にも着手は難しいものです。このため、固定費については、なるべく早期からしっかりと見直す必要がありそうです。
よって、50代になった段階から60代に向けた生活水準の見直しに着手し、徐々に支出を削減すると同時に、少しでも貯蓄額を増やす取り組みが必要となります。
理想としては、年金生活者となった以降においても「収入=支出+貯蓄」のスタンスを崩さないことといわれています。そしてこれが実現できたなら、あなたは、困窮状態とはほぼ無縁の中で老後を迎えることができることになります。
コメント