老後の不安要素は人それぞれであるわけですが、中には現状賃貸住宅に住んでいるものの、このまま老後を迎えた場合、貸し手がいなくなるのではないかといった不安を抱える方は少なくないようです。
貸し手がいなくなれば、住むところを失うことになります。若者であればそれでもなんとか凌ぐことはできるかもしれませんが、老後においてこの事態を迎えるのは、かなり厳しいものがあるわけです。
そこで今回は、賃貸住宅なままに老後を迎える不安の対策方法について考えを進めていくことにしましょう。
まずは昨今の賃貸住宅事情を知る
賃貸住宅のままに老後を迎える不安を払拭するためには、まず、そもそも昨今の賃貸住宅事情がどのように推移しているかを把握しておく必要がありそうです。
1)首都圏や利便性の高い地域の賃貸物件
日本の人口はすでに減少傾向にシフトしてきています。ところが首都圏においては、いまだ人口増加が続いており、まさに一極集中傾向はいまなお続いていると言えます。
また、現在首都圏ではちょっとしたバブル状態にあるところも少なくありません。利便性の高い場所にある分譲マンションの価格が高騰しており、すでに一般的なサラリーマンが購入することのできる域を超えてきていると言えます。
また、これに沿う形で利便性の高いエリアにある賃貸マンションの価格もたかどまり状態にあります。
家賃が高いわけですから、入居率が下がりそうなものですが、人気エリアにある賃貸マンションの入居率は高いことから、家主としても強気に出ることができます。このため、老後において部屋を借りるにしても、高齢者を理由に拒否される場合もあるわけです。
2)地方ならびに地方都市の賃貸物件事情
一極集中傾向から今なお人口が増加し続けている首都圏やその近県に対して、地方ならびに地方都市の賃貸物件事情は大きく異なるものがあります。
これまで首都圏やその近県のしかも利便性の高い地域にしかお住まいの経験がない方の場合、日本全土において、同様のバブル傾向が発生しているかのように思われている方もいらっしゃるようです。
しかし、地方や地方都市の賃貸物件事情は、現状まったく異なる事情を抱えている地域が少なくありません。
現在、日本には20市の政令指定都市があります。政令指定都市とは、法定人口50万人以上を擁する市の中で、文字通り政令で指定された大都市圏であるわけですが、首都圏を除いた地方政令都市の多くでも、人口減少が顕著なものとなりつつあります。
ところが、それでもいまだ新たな戸建住宅やマンションの建設は盛んに行われています。これは、日本国民の多くが新築を求めるためであり、工務店などの供給側は、いまだ強気の姿勢を崩していないわけです。
ただし、人口は明らかに減少しているわけですから、空室率は上昇傾向をたどります。よって、地方や地方都市の場合、利便性が高い地区以外、不動産投資での利回りが悪化、空き室に苦慮する家主は増えつつあるわけです。
3)地方における住民不在の戸建住宅の増大
地方や地方都市における人口減少傾向の内訳としては、若者が首都圏などに移転する現象が目立ちます。
大学進学や就職において、より幅広い選択肢を求めるのはある意味当然のことといえそうです。よって、両親が住み続けた住宅に、子供世代が住まないといったことが少なくないわけです。
その土地に大きな資産価値があれば、住まない場合でも売りに出してしまえばことが足りるわけですが、実際には買い手がなかなかないという理由から、不在となった住宅が増え続けているのが現状です。
子世代としては、固定資産税が発生することから、いち早く売りたいと考えるわけですが、買い手があらわれないことから、破格の安値で売りに出すということも少なくありません。
首都圏にお住まいの方からすれば信じがたいことかもしれませんが、中古車よりもむしろ安価な価格がついた住宅も地方には数多く存在するのです。
4)高齢者向け有料賃貸住宅の存在
地方自治体からすれば、人口減少は大きな問題と言えます。人口が減少すればそれだけ税収が減るわけですから、自治体の運営にも影響が及びます。このため、昨今ではさまざまな対策のもと、新たな住民誘致に力を入れだしています。
そしてこの対策のひとつに高齢者向け有料賃貸住宅の増設を挙げることができます。
高齢者向け優良賃貸住宅とは、60歳以上の住民を対象として、高齢者が安心して住み続けられる住宅を、地方自治体が認定することで建設された民間の賃貸住宅を言います。
高齢者向け優良賃貸住宅では、トイレや寝室、浴室などに緊急通報装置の設置が義務付けられていたり、バリアフリーの仕様となっている物件も少なくありません。
また、自治体によっては入居者に対する家賃補助を設けているところもあります。
高齢者向けであるわけですから、当然のこと高齢者であることを理由に入居を拒否されることはありません。むしろ所得に上限を設けている住宅が目立ちます。
賃貸住宅で老後を迎える不安の対策方法
これまで日本における昨今の住宅事情について説明を進めていまいりました。これらをご理解いただくことでも、不安を払拭するための手立てを得ることができるのではないかと思います。
最もシンプルな方法は、老後の生活を首都圏の利便性の高い地域に求めるのではなく、地方や地方都市に向けることといえます。
今後、日本の人口はさらに厳しい減少傾向を呈することになります。つまり地方においては、住み手のいない住宅はさらに増加することになるわけです。
当然のこと、価格は不動産価格、家賃ともに下落傾向を辿ることになります。しかもそれは、過疎地や限界集落などの地域ではなく、政令指定都市の中心地でも発生しているわけです。よって、定年退職を期に、地方都市への移転を考えることは、有効な対策方法となりうるわけです。
また、定年退職後に首都圏に住み続けるにしても、いずれ移転することを前提として、地方における対策をプランとして持つことで、安心を得ることもできることでしょう。では次に、実際に不安を払拭するための対策方法について、説明を進めていくことにしましょう。
1)地方都市の中古物件を購入する
まずは、ある程度まとまった退職金が見込めたり、貯蓄をお持ちの方の対策です。先にも説明したように、地方都市の中古物件価格は下落傾向にあります。
地域によっては新築に強気な動きを見せるところもありますが、中古市場には若者は触手を動かさないことから、中古物件は動きが取れない状況が今後も継続する可能性が高いわけです。
このため、中古の戸建住宅やマンションであれば、場所にもよりますが格安での購入が可能となります。
ただし住宅ローンは難しいので、あくまでもこれを現金で購入することが前提となります。また、取得した物件には、快適な生活を維持できるだけのリフォームを施すのも良いでしょう。
ちなみに、地方都市であれば、老後の夫婦二人が快適に生活できる中古の戸建てやマンションは、リフォーム代金を入れても1000万円程度あれば取得することができます。
物件をしっかりと見切る必要はありますが、転売や家賃収入を目的とするものではなく、あくまでも終の住まいとして取得するわけですから、利回りを重視するよりもむしろ快適な老後生活を実現できる物件を探す目が必要となることでしょう。
いずれにしても、持ち家に住むわけですから、当然のこと賃貸の不安は払拭できることになります。
2)地方の賃貸物件を探す
中古物件は理想ながら、退職金や貯蓄がないので購入は難しいという方の場合、地方の賃貸物件を漁ることも有効な手段のひとつだと言えそうです。
これについては、たとえばこれまで何らかの馴染みのある地域でも良いでしょうし、生まれ育った地域でも良いかもしれません。しばらくの時間を設けて、その地に赴き、実際に物件を見て回ることで、現在地方都市が抱えている空室率問題や家賃相場を実感していただくことができるはずです。
地方であったとしても、たとえば駅のすぐ近くなど利便性が高い地域では、強気相場のところもあります。しかしながら、地方の場合、基本は車社会です。また、老後においては、日々出勤する必要はないわけなので、あえて駅近くに住む必要性は、現役世代ほどはないはずです。
駅近くというよりも、むしろ医療機関や自治体運営の施設、スーパー、さらには公園などが近隣にあるか否かといった視点で物件を探す必要があります。
3)高齢者向け有料賃貸住宅を探す
これまでにも触れているように、高齢者向け有料賃貸住宅は、地方自治体によって認定された高齢者向けの住宅であるわけですから、あらかじめ高齢者に対する配慮がなされた住環境と言えます。
また、自治体によっては、家賃補助までして住民誘致を行うわけですから、これを用いることで格安で快適な老後生活を送ることが可能となるはずです。
今後、地方都市の人口減少はさらに顕著となることが確実視されています。近未来における人口の推移は、統計データにおいてもしっかりと把握することができるわけです。
人口減少が顕著となれば、地方自治体はこれを食い止めるための政策を講じざるを得なくなるわけですから、今後も高齢者誘致は進むことになりそうです。
このため、全国の高齢者向け優良賃貸住宅の動向に対してアンテナを張り、常に情報を把握しておくことで、最適なタイミングにおいて、地方への移転が可能となるはずです。
当然のこと、しっかりとした知識を持っていれば、不安に戸惑うこともなくなるはずなのです。
まとめ
今後、日本の人口減少率は加速することになります。よって住居の需要は全国規模で低下し始めることでしょう。
日本では、基本的に新築物件を求める傾向に変化はなく、よって中古物件の相場は、地域にもよりますが厳しい状況に陥ることになります。しかしこれは、借りる側からすれば、市場が拡大するといったメリットを享受できることでもあります。
また、人口減少が顕著となる地方自治体においては、減少傾向に歯止めをかけるための住民誘致策を講じる必要性に迫られることになります。税収の減少を食い止めなければならないからです。
ところが、若者の多くはいまだ首都圏を目指し、一極集中には歯止めがかかりません。これについては、地方自治体のみならず政府が早く対策を講じる必要があるわけですが、新たに東京発のリニアの着工を始めるなどの動きをみていると、どうやらそんな動きにはあまり力をいれていないことをうかがい知ることができます。
人口の減少傾向が顕著となる一方で、首都圏の一極集中がさらに加速するわけですから、日本の住宅事情にも大きな歪みが生じるのは明らかであるわけです。
よってもし、賃貸住宅のままに老後を迎える不安を抱えていらっしゃるのであれば、むしろ大きく生じる歪みを逆手に取ることで、安心した快適な老後生活を送る手段を得ることが可能となるわけです。
なお、これらのプランは、必要となった際に考えるよりも、むしろ老後を迎える以前から、情報を得つつしっかりとしたプランを構築しておくことが必要だと言えます。転ばぬ先の杖をいち早く用意しておくことで、文字通り、転ぶことのない第二の人生を歩むことが可能となるからです。
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