先に年金の繰り下げ制度について触れています。繰り下げ制度に対して、65歳以前から年金を受け取ることができる繰り上げ制度も用意されています。
年金を必要とする人の中には、収入が全く絶たれておりしかも取り崩す貯蓄もないことから、生きるためにはいち早く年金が必要となるという方もいらっしゃるかもしれません。
老齢基礎年金繰り上げ受給
老齢基礎年金は、基本的に65歳からの受給となりますが、申請することでこれを60歳から65歳になるまでの間繰り上げて受ける制度があります。これを老齢基礎年金繰り上げ受給と呼びます。
なお、繰り上げ受給には、全部繰り上げと一部繰り上げがあります。繰り上げ支給の老齢基礎年金を受給しても特別支給の老齢厚生年金は支給されるので、繰り上げ支給の老齢基礎年金は、全部繰り上げと一部繰り上げのいずれかを選択することが可能です。
繰り上げ受給のメリット
繰り上げ受給のメリット
・76歳8ヶ月までは年金総額が多い
繰り上げ受給のメリットとしては、いち早く年金を手にすることができるという点を挙げることができます。何らかの理由において60歳からは年金を頼って生活をしたいとい方の場合、規定で65歳からの年金を、5年間前倒しで受け取ることができるわけです。
月額の受給額は減額されますが、本来受け取ることができない5年間、年金を受け取ることが可能となるわけですから、当初は損益分岐において利益を得る側にいることができます。
65歳からの受給に比べて、マイナスとなる損益分岐は、76歳8ヶ月との試算がなされています。繰り上げ受給によって減額された受給額は、生涯変わらないことから、77歳以降は逆に損失側に移行することになります。
繰り上げ受給のデメリット
繰り上げ受給のデメリット
・減額された額が生涯固定される
・65歳まで遺族厚生年金と遺族共済年金の併給ができない
・障害基礎年金を請求できない
・寡婦年金の請求ができない
繰り上げ受給のデメリットは、月の年金額が、繰り上げ月数×0.5%減額され、それが生涯に渡るという点です。
繰り上げは現在、65歳の規定年齢を60歳から受け取ることが可能となるわけですから、60歳から年金を受給するとすると、60ヶ月×0.5ということで30%の減額がなされることになります。
この年金額は生涯に渡り適用されてしまうので、長生きをすればするほど差額は拡大することになります。また、上記に記したように、障害基礎年金や寡婦年金の請求ができなかったり、65歳まで遺族厚生年金と遺族共済年金の併給ができないなどの制約もあります。
まとめ
老齢基礎年金繰り上げ受給は、60歳の段階で年金を手にする必要がある方にとっては、救いとなる制度と言えます。しかしながら、月額の年金が3割程度も減額されてしまうのは、惜しいともいえます。
すでに触れていますが、繰り上げ受給による損益分岐は76歳となります。
自身の寿命を損得に当てはめるのもどうかとは思いますが、繰り上げ受給は長生きをすればするほど損失が膨らむ制度ということができます。
もし、お体がお元気であり、十分に働くことができるのであれば、とりあえず65歳まで働く道を選択したり、その段階でも十分に働く余力があるのなら、むしろ繰り下げ受給にトライしてみるというのも、70歳以降の生活安定に有効であることをご理解いただければと思います。
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