【しっかり確認】年金を70歳まで繰り下げることのメリットデメリット

シニア年金

一億総活躍社会という名のもとで、政府は高齢に至るまでの労働を推奨しています。この背景には、年金の受給開始年齢をなるべく後ろに引き上げたいといった思惑も見え隠れします。

しかしながら、たとえば70歳にまで年金を繰り下げた場合、それから以降の月額の年金支給額は増えることになるといったメリットもあります。今回は、年金を70歳まで繰り下げることのメリットとデメリットについてご紹介することにしましょう。

年金の繰り下げ受給制度とは

そもそも年金の繰り下げ受給制度をご存知でしょうか。これをご理解いただいていないと、メリットやデメリットの理解も難しいことになります。

これまで60歳から支給されていた年金は、段階的に引き上げられてきており、昭和36年4月2日以降生まれの男性、昭和41年4月2日以降生まれの女性の場合、65歳からの支給に変更されています。受給開始年齢はさらに引き上げられる可能性も否めませんが、現状、基本的に年金の受給年齢は65歳からということになります。

年金の繰り下げ受給制度とは、本来の受給開始年齢を自らの意思で後ろにずらすことを可能とした制度と言えます。受給開始年齢を後ろにずらすわけですから、その間、年金を受け取ることができません。

しかしその一方で、1ヶ月後ろにずらす毎に、月額年金額が増えることになり、この年金受給額は生涯に渡り受け取ることが可能です。

年金繰り下げ受給の申請

特別支給の老齢厚生年金受給権者が老齢基礎年金や老齢厚生年金、もしくはそのいずれか一方の年金の支給を66歳以降に繰り下げて受けようとする場合、もしくは老齢厚生年金の受給権者が老齢基礎年金の支給を66歳以降に繰り下げて受けようとする場合には、老齢基礎厚生年金支給繰り下げ請求書に必要項目を記入の上、最寄りの年金事務所か街角の年金相談センターに提出する必要があります。

なお、老齢基礎厚生年金支給繰り下げ請求書は提出先、もしくは日本年金機構のWebサイトからPDF形式のファイルとして入手することが可能です。

年金繰り下げ受給のメリット

繰り下げる毎に月額の受給額が増える

年金繰り下げ受給のメリットとして、1ヶ月後ろにずらす毎に、月額年金額が0.7%増えることになります。

仮に70歳まで繰り下げた場合、月額年金額は42%増額されることになります。また、この年金額はそれから以降生涯に渡って受給することが可能となります。

老齢基礎年金と老齢厚生年金の分離

年金繰り下げは、老齢基礎年金、老齢厚生年金それぞれ別々に繰り下げ受給することが可能です。よって、必要に応じて一方のみを繰り下げ、一方は規定通り受け取るという選択も可能です。

年金繰り下げ受給の損益分岐

70歳まで受給を繰り下げることで、月額年金額は42%増額されることになるわけですが、無条件にトクをするかというとそうではありあせん。およそ5年間の間、本来であれば受給できる年金を受け取らないことになるからです。

さて、ではこの部分を損失として捉えた場合、損益分岐はどこになるのでしょうか。

年金繰り下げ受給の損益分岐は、11年との試算があります。つまり、70歳から受け取った場合、81歳を超えた以降、実質的な増額の恩恵を受けることができることになります。

年金繰り下げ受給のメリットを活かす生き方

昨今では、シニア世代の方であっても、70歳程度までであれば現役世代とともに元気に働き続けることができる人が増えてきています。

お元気で働くことができるのであれば、70歳までは仕事で得た収入で生活を維持し、年金は70歳以降に受給することが望ましいと言えるかも知れません。というのも、70歳以降は健康寿命を超えていくため、働くことができなくなることも懸念されるからです。

よって、働くことができる間は働き、それが叶わなくなったときまでは、年金の受給を控えておくという方が、堅実的な選択方法といえそうです。また、実際にそのような生き方を選択される方が増えつつあります。

また、国民年金の場合、満額保険料を収め続けたとしても、年金額は月額6万円少々の額にとどまります。このため、70歳まで繰り下げることで、年金月額を9万円程度まで引き上げ、70歳以降の生活資金として温存するといった方も増加してきています。

年金繰り下げ受給のデメリット

繰り下げた間は年金を得られない

当然のことですが、繰り下げ申請を行った場合、それまで年金を受け取ることができないわけですから、その間は、貯蓄や仕事による収入によって生活を維持する必要があります。

70歳以降の事を考えた場合、年金繰り下げを行いたいと思われたとしても、住宅ローンの残債務があったり、安定した収入を得ることができる仕事が見つからないなどの理由において、受給権者となった段階で、年金を受けるしかないといった方も少なくないわけです。

81歳まで生きなければ元が取れない

先にも触れていますが、70歳まで繰り下げた場合、その期間受け取らなかった年金額を、70以降で増額分の42%で補填するためには、およそ11年の年月が必要となります。

このため、70歳以降受給を開始した場合、受け取らなかった年金を補うためには、81歳まで生きる必要があります。それ以前に他界された場合、元が取れないわけです。

ただし、健康寿命以降は、働くことが難しい場合もあり、高齢者となられた以降の年金額は少しでも多い方が助かるわけですから、その時に備えるという意味でも、このデメリットを受け入れる価値はあろうかと思われます。

振替加算の増額がない

配偶者が65歳になった時点で打ち切られることになるものに加給年金がありますが、老齢基礎年金の受給資格を有している場合、年金額がそれ以降も上乗せされて支給される振替加算があります。

ところが、年金の受給を繰り下げた場合、振替加算の増額を得ることができないといったデメリットがあります。また、繰り下げた期間において、振替加算の支給はないので注意が必要となります。

70歳以降の繰り下げは増額対象にならない

「体も元気だし、いっそ75歳くらいまでは年金に頼らず生きよう」

とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかしここで注意すべき点として、繰り下げによる年金の増額は70歳までであり、42%の増額が最大となります。この点もあらかじめ把握しておくべき点と言えます。

まとめ

予想される月額の年金受給額で生活が回らないとの予想が立つ場合、繰り下げ制度は最大限に役立てたいものです。働くことができるうちは労働によって得られる収入により生活を維持することで、70歳以降の年金受給額を少しでも増額することが可能となるからです。

しかしながら、高齢と慣れば就ける仕事の幅も、次第に狭まるものです。また、加齢と共に体力や判断力などが低下することから、これまでできた仕事がうまくできないといった問題に直面することもあります。

よって、働くことが出来るうちは年金の繰り下げを行い、働くことができなくなった時に備えることが重要なポイントとなりそうです。

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