今回は、ミドルからシニアのリスクと回避策について考えを進めていくことにしましょう。というのも、現代の私たちは一昔前のような安定の上では、生涯を歩むことが難しくなっているからです。
ミドルからシニアに遭遇するリスク
一昔前であれば、高校や大学を卒業して就職をすれば、あとは真面目に働くことで生涯を全うすることができたものでした。ミドル以降は収入も増え、生活は右肩上がりで豊かなものとなりました。
というのも、サラリーマンであれば終身雇用制度に守られており、また、年功序列的に収入は上がり続ける状況にあったからです。
一方、現在におけるミドルからシニアは、それほどまでにシンプルに生活を維持することができなくなりつつあります。これはなぜでしょうか。
ミドル層以降の労働ニーズの変化
バブル経済崩壊以前の日本において、人材は企業拡大に不可欠な存在であり、よって一度雇用した人材には、生涯に渡り働いてもらうことが好ましい状況にありました。
新たな人材確保には、求人や社内教育における多大なコストが発生することになります。このため、確保した人材を大切にすることが、企業繁栄のための条件でもあったわけです。
しかし、現在では仕事の多くは、サーバーなどのコンピュータにより自動化することが可能となっています。また、人工知能の利用範囲も急速に広がりつつあることから、多くの人材を採用せずとも、売上を拡大する方法が多数存在します。
このため、現代の企業は、知力や行動力に長けた若い人材を必要とする一方で、積み上げる形で仕事の領域を拡大するミドル以降の労働力を、昔ほどは必要としなくなってきています。
ミドル層以降の待遇面の冷遇
現代では、ミドル以降のサラリーマンの収入待遇は、かなり冷遇されてきているようです。定年に向けて収入が上がり続けるのはむしろ少数派であり、その多くは、ミドル世代からの収入が上がらなかったり、逆に50代を境に年収が減額されていく企業も少なくありません。
労働ニーズの変化は、待遇面においても顕著に表れていることになります。
ミドル層以降の支出面増大
給与がなかなか上がらない中で、支出面は一般的に増大していく世帯が多いようです。家計調査報告による年齢階級別の消費支出額を見ると、最も高いのは50歳から59歳となっています。
これはいくつかの要因があります。
まずは、年齢とともに生活水準を上げ続ける慣習があります。ミドル世代は、おおよそバブル前後において現役だった親を持ちます。
当時では、年齢が増すとともに生活は豊かに推移したわけですから、その影響を受けていれば自分の水準もそうなるはずだと考えるのも自然ではあります。
しかし、先にも申し上げたように、収入は昔のように右肩上がりには増えないことから、ここに無理が生じることになります。
また、ミドル層以降においては、子供が高校から大学へと進学する局面を迎えることになり、塾や予備校、さらには大学の入学金、寮費や生活費などに多大なコストが発生します。
これらのコストが、家計に大きな負担を強いることとなるわけです。
突然襲い掛かるリストラのリスク
ミドル以降の冷遇は、ときにリストラ対象となる場合もあります。実際に50代を迎えた段階でリストラ対象となる人も少ない数ではありません。この状況は中小零細のみではなく、大手企業においても皆無ではありません。
また、不運にも長年勤めた会社が倒産してしまうこと皆無ではないわけです。
最もコストがかかるミドル世代において、職を絶たれてしまうと、多くの場合再就職に苦慮されています。また、再就職がかなったとしてもおおよそ年収は半減することから、これまでの人生設計を根底から見直す必要が生じてしまいます。
ミドルからシニアに向けたリスク対策
これまでご紹介したミドルのリスクに対策を次にご紹介します。
とはいえ、これは収入面をクリアしておけば、おおよそ問題は解決することになるはずです。人生におけるトラブルとは、その多くが経済的問題をはらむものだからです。
複数の収入源を確保しておく
これまでサラリーマンの場合、副業が禁止されているケースが大多数だったといえます。正社員として生活が確保されているので、その他の収入源確保のために働いてはならないというのが雇用側の言い分であったわけです。
ところが、年功序列による昇給が望めず、しかも終身雇用に守られていないわけであり、いつリストラに合うかもわからない現状においては、何らかの自己防衛策を施しておく必要があります。
また、厚生労働省では、働き方改革の中で副業や兼業の普及促進を図り始めています。
このことから今後は複数の収入源を持つ人の数が増加することが予想されます。ミドルのうちから、何らかの収入減を確保することができれば、コスト拡大に対応することができるはずです。
また、突然のリストラに遭遇したとしても、明日から路頭に迷うということもある程度は回避することができるはずです。
当面不要なお金については、老後生活のために貯蓄に回すことで、シニア以降の安定性を確保することもできることでしょう。
生活レベルの向上よりも貯蓄額の拡大
先にも申し上げたように、一昔前のサラリーマンは、年齢とともに生活レベルの向上を図るのが一般的でした。そしてそんなサラリーマンの親を持つ現代のミドルが、同様のライフスタイル向上を目指すのはある意味自然なことといえます。
しかし現状においては、多くの方が50代で昇給が止まると同時に、教育費が増大するといった局面に遭遇することになります。
収入が支出増を補完することができないわけですから、以降は赤字になることは明らかです。
このため、現在のサラリーマンは、生活レベルの向上よりもむしろ貯蓄額の拡大を意識する必要がありそうです。
そしてこれにしっかりと気づき始めたミドルの方が、厳しいひと時をしっかりと生き抜くことができるパスポートを得ることになるといえそうです。
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